「あんたたちだけで、大丈夫かねぇ」 夜勤の従業員に声を掛け、自分たちの寝室に戻ると、マグダレーナが言った。ダンカンは、マグダレーナをベッドに腰掛けさせると自分も隣に座り、彼女の肩をそっと抱いた。 「ビアンカの夢で見たことが、いつものように今夜か、遅くても2・3日のうちに起こるとしたら、パパスはサンタローズにはいないんじゃないかと思うんだよ。」 マグダレーナはだまって、怪訝そうな顔をして聞いている。 「ビアンカは、水がたくさんある、暗い牢屋、と言っていた。あたしの知っている限り、サンタローズにもこの辺りにも、そんな牢屋はないよ。」 「でも確か、サンタローズの近くに、船でしか入れない洞窟があったろう。」マグダレーナが不安そうに言う。 「そうだね。でも、あそこに入った人の話を聞いたことがあるけど、牢屋があるとか、パパスがかなわないような魔物がいるなんて話は聞いたことがないよ。おまえだってそうだろ。」 「ああ、そうだね」そう答えながらもマグダレーナは、不安を拭いきれないでいた。ダンカンは、マグダレーナの不安が痛いほどわかった。 「たぶん、パパスは・・・また旅にでているんじゃないかな。リュカちゃんをつれて。そして、旅先で、何かあったんじゃないかな。たぶん、サンタローズの家は留守か、サンチョさんが一人でいつものように留守番しているだけだろう。だから、あたしとビアンカだけでも大丈夫だよ。」 ダンカンは、マグダレーナを安心させようと、強くその肩を抱いた。 「なぁに、危なそうだったらすぐに逃げてくるさ。土地勘はあるし、ビアンカはおまえに似てすばしっこいからな。」 「ああ、そうだね、ティムズ。」マグダレーナはダンカンに身体をあずけながら、まだ不安を拭いきれないでいた。 「だけど、そうだとしたら、その・・・このことを、パパス達には・・・」 マグダレーナのその言葉に、ダンカンはマグダレーナを抱く腕にギュッと力を込め、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。 「大丈夫、パパスのことさ。きっと大丈夫だ・・・」 だが二人は、ビアンカのこの「夢」がはずれたことがないことを、なにもしなかったらその通りの事が起きるのをよく知っていた。 |
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