それから二人は、ほうきとハタキを持って屋根裏にあがった。ビアンカの箱を奥にある前の主人の荷物と一緒にすると、他の箱と同じくらいホコリが積もるようにとその辺りを掃いたりハタキではたいたりして、咳やくしゃみをしながら盛大にホコリを舞い上げた。 やがてビアンカの箱にもほこりが積もり、他の箱と一緒に、まるで時の流れに置き去りにされた思いでのような姿になった。 ビアンカは、小さな涙を一粒こぼし、ちょっと悲しげな笑顔で番頭を見上げ、「これで・・・大丈夫だよね?」と小さな声で言った。 番頭は、こんな小さな女の子にこんな笑顔をさせなければならないことに胸が痛んだ。 「ええ、これなら、誰が来たって見つかりっこありませんよ。私たち二人以外はね。」 ビアンカは満足そうに頷いた。 二人は自分たちにも積もったほこりを辺りに散らさないようそっと階段を下りると、裏口から外へ出た。そこまで来て初めて明るいところでお互いの、真っ白になった姿を見た。 二人は同時に吹き出すと、声を出して笑った。宿の中から女中頭が叫んでいるのが聞こえてきた。 「誰だい!階段をホコリだらけにしたのは!もうお客さんが入ってるんだって・・・・まぁ、まぁ、まぁ!」 真っ白な二人の姿を見て、女中頭は目を丸くした。 「ごめんなさい、あたしたちです。」 「気をつけて歩いたんですけどねぇ。ちゃんと掃除しますよ。」 女中頭の驚いた顔がおかしくて、二人はまた笑い出しながら答えた。 「掃除はいいよ!それ以上、その格好で宿ん中歩き回らないでおくれ!あんたはすぐに家に帰って、風呂に入って着替えておいで!もう満室だから、受付は誰か立たせておくよ。お嬢さんはそこでホコリを払って待っててくださいよ。シーツででもくるまなくちゃ、風呂場までだってつれてけないよ。いいですか!中に入らないでくださいよ!」 女中頭は口を挟む隙を与えずそう言うと、プリプリと怒って頭をふりながら宿の中にシーツを取りに入っていった。 「ごめんなさーい!」 まだ笑いがおさまらないビアンカが、女中頭の背中に向かって叫んだ。 番頭はくしゃみをしながら、ビアンカのホコリを払ってやると、「すこぉし、元気がでましたかね?」と言った。 ビアンカは、番頭が自分を心配してくれていたことに気付き、さっと頬を赤くした。 「大丈夫、お嬢さんにも、だんなさんや女将さんにも、あたしたちがついていますよ。なぁに、兵隊が来ても、あの女中頭に怒られたら泣きながら逃げていきますよ。」 「ありがとう」ビアンカは、小さな声で言った。 |
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