−−−あ、またあの夢だ。 リュカは、あの地下牢で捕まっていた。無抵抗のパパスがやられている。夢なのだ、あがいてもダメなのだとわかっていても、それでも抵抗せずにはいられない。つらい、悲しい、まだビアンカにも詳しく話していない記憶。奴隷の生活をしていた頃は毎日のように見ていた夢。とらわれてしまって、抜け出せないつらい過去。 でも、今日は違った。真っ暗なはずの地下牢に、小さな、かすかな光が射し込んだ。 『リュカ。リュカ。』 やわらなか、優しい声がリュカを呼んでいる。夢なのはわかっていてもなにかにすがりたくて、リュカは光に向かって手を伸ばす。優しい暖かさがリュカを包んだ。そしてその光は次の瞬間・・・・・・リュカの鼻をつまんだ。 「リュカ!」 目の前に光の渦があふれる。その輝きは集まり、人の形を描いて・・・やがてビアンカになった。 「あれ?・・・ビ、ビアンカ?」 「あれ?じゃないわよ。」 ビアンカは唇をとがらせて、リュカを見下ろしている。太陽の光がビアンカを照らして、まるでビアンカが輝いているみたいだ。 「また恐い夢見てたんでしょ?こんな日向で寝てるからよ?」 「え?」 リュカは横になったまま、あたりを見回した。船の移動と夏の太陽の動きが一緒になって、日陰だったはずのそこは、サンサンと日の光を浴びる影一つない日向になっていた。 「ほら、あっちならまだ日陰だから、昼寝するならあっちにいきなさい。」 まるで子供に言い聞かせるようなその口調に、リュカは拗ねてそっぽを向いて答えた。 「いいんだよ、焼いてるんだから。」 「そのかっこうで?」 「そうさ!」 ビアンカがくすくす笑っているのがわかった。リュカはますます意固地になって、がんとしてここを動かないぞ、と言うように、大の字になった。 そのとき・・・ビアンカの白く輝く、しなやかな腕がリュカの視界を横切ると、ふわりとリュカの頭を持ち上げた。リュカが驚いて身動きができないでいる間に、ビアンカはリュカのターバンを取ると、リュカの頭の下に、自分の膝を差し入れた。 「こうしたら、まぶしくないでしょ?」 確かに、ビアンカが太陽を遮って、リュカの頭は日陰になった。 「でも、暑いのは暑いけどね〜!」 そう言って、ビアンカは髪を結っていたリボンを解いて、髪をほどいた。黄金の波が広がるようにビアンカの髪が広がり、太陽の光を受けてきらきらと輝いた。 そのまぶしさにリュカは思わず目を細めた。 ビアンカが髪をかきあげるために手をあげると、彼女の肩のマントがリュカの頬をなでた。 「あれ?ビアンカ、濡れてる。」 ビアンカはなんのこと?という顔でリュカを見た。 「・・・今度は、何を燃やしたの?」 ビアンカの火炎系呪文の練習を見物している仲間達は、毎日誰かが被害を受けていた。しかしそれでもギャラリーが減らないのは、彼女の美しさのせいか、明るさのせいだろうか・・・ ビアンカはしらを切ろうと黙っていたが、リュカの視線に耐えかねたようで、小さな声で白状した。 「ゲレゲレのしっぽが、ちょっとだけ・・・こげちゃったかな〜」 「もう、船は燃やさないでよ」 リュカは笑うのをこらえて言った。 「大丈夫!・・・たぶんね」 |
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