村人は、教会の周りに集まっていた。あっという間にたくさんの物を失った村人達は、途方に暮れていた。彼らは力無く座りこんだり、怪我が重そうな者は、ござや戸の上に横たわっている。彼らは人の気配を感じるとビクリとしたが、それが敵ではないことを認めると、声をかけることもせずぼんやりとダンカン達を見ていた。 「シスター!」 ダンカンが、けが人のそばにひざまずく若い女性を見つけて声を掛けた。振り向いた女性は、自分も額に怪我をし、衣はすすけている。 「まぁ、ダンカンさん。本当にいらっしゃったのですね。」 シスターはたいそう驚いた様子で、ダンカンを見た。そして、ディークに向かい、「申し訳ありませんでした」と言った。 「あ、いいっす!気にしてないっす!」 ディークは赤くなり、ぶんぶんと手を振り回している。 シスターはダンカンに恥ずかしそうに説明した。 「先ほど、この方をわたくし、兵が戻ってきたのかと誤解してしまって・・・」 「いや、自分、ここに来たの初めてですし、こんなかっこうで森からでてきたら、びっくりされて当然っす。」 ウォリーは真っ赤になってそう言うと、バスケットから薬草と酒を取り出して、シスターに渡した。 ダンカンとウォリーはシスターから、簡単な事情とけが人の状況を聞いた。 「もう少し、人手がいりますね」 「ああ、それに重症の人は街に運んだ方がよさそうだ。この状態では他の方も、看病どころではないでしょう。」 二人はぐるりと辺りを見回した。焼け残った家や納屋も教会も、修理をしないと雨露をしのげないだろう。 「ディークさん、ちょっと街に戻って、みんなに知らせてくれませんか。」 「え?自分より、ダンカンさんがお嬢さんとお戻りになったほうがいいっす。ちっちゃい子は帰った方がいいっすよ。」 ダンカンは、早速シスターの手伝いを始めているビアンカを見た。 「あの子でも、いないよりはましでしょう。それに、無理に連れて帰ったらまた昨日みたいに飛び出してしまうでしょうし、あたし一人で戻ったら、うちのかあちゃんがもっと騒ぎますよ。」 ディークもビアンカを見た。昨日の事件と、女将さんを思い出す。確かにダンカンの言うとおりだろう。 「わかりました。すぐ、戻ってきます。」 「あ、ちょっと待ってください。」 ダンカンは、キメラの翼を懐から出したディークを慌てて呼び止めた。 「いきなり街で騒いでも、混乱するだけです。まず、守衛長さんに説明した方がいいでしょう。それから、町長に相談してください。」 そしてダンカンは、周囲の村人に聞こえないよう声を落として続けた。 「町長は、危険だから誰も行かせないと言うかもしれません。そのときは、あなたも戻ってこなくていいですよ。」 「そんな!自分は!」 「ディークさん!」ダンカンは声を上げてディークを制すると、再び小声で言った。 「町長は、街の人達を守る義務がある。ここは兵がまたやってくる可能性もあるし、アルカパに兵が行く可能性だって、まったくないわけではない。町長が心配するのは当然のことですよ。」 ディークは納得行かないと言う顔をしたが、ダンカンの言うこともまた正しいということはわかったようで、しぶしぶ「はい」と返事をした。 「あと、うちのかあちゃんに伝えてください。今夜は部屋を一杯にするなって。もしけが人を運べたら、使いたいのでね。」 「わかりました!行って参ります!」ディークは元気に言うと、開けたところに走っていって、キメラの翼を放り投げた。 町長が駄目だと言ったとしても、あの人は戻ってきちまうだろうなぁ。 ダンカンはクスリと笑い、すぐに顔を引き締めると、自分もけが人の手当ての手伝いを始めた。 |
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