村の入り口には、若い守衛達が交代で立っていた。彼らが見えるところに火をたいて、街の男達と、怪我が軽かった村の男が集まり、火を囲んだ。 「『物』って・・・いったい何を探してたんだ?」 ダンカンの話を聞き、武器屋の主人が言った。 「それがなにかは、何も言っていなかった。」右足を添え木で固定した村の若者が答えた。 「だが確かに、預かってないか、隠してないかと言ってたよ。牛小屋の藁の中まで探していたさ。」 「サンチョさんが持って逃げたんじゃないのか?」 「そうかもしれない。でもサンチョさんが持ち出したという証拠もない。」 「そんなやっかいな物なら、家においとかないかもしれないな。」 「そもそも、その捜し物と王子の誘拐とやらが、どういう関係があるんだ?」 男達は勝手に自分の考えをしゃべっていたので、まとまった答えがでなかった。 ディークが恐る恐る、男達の話しに加わる。 「それより、また来ますかね?兵隊は?」 「なんだおまえ、びびってんのか?だらしねーなー、新入り!」 先輩の守衛にそう言われても、ディークがびくびくしながら続けた。 「だってガス先輩、そんな兵隊がアルカパにきたら、いくら隊長が強くったって、かないませんよ」 疲れきっていたディークは、人目もはばからず弱気なことを言った。 「おまえは・・・ちょっと根性いれてやる!」 「まぁまぁ・・・」 いきり立つ先輩の守衛とディークの間に、街の酒場のバーテンが入った。 そして次から次へと彼らの目の前に酒を並べた。 「あんた・・・何だって、こんなに持ってきたんだ?」 「消毒に使えるかと思いましてね。」 確かに並べたのは強い酒ばかりだ。 「だったら俺が、胃袋の消毒につかってやらぁ!」 「あんたの場合はつけときますよ、ガス・グリソム!」 瓶の中の一本を取り上げた先輩守衛のガスに、バーテンが釘を刺した。 どこかからコップを集めてきた酒場の主人もやってきた。どうやら今日は、街の酒場は休業の様だ。 「あんたたちは、街道を来ただろ。変な奴に会わなかったか?」 コップにさっさと酒を注ぎながら、武器屋の主人が酒場の主人に聞いた。 「なんだよおやじ、俺も一緒に来たんだから、俺に聞けよ。」 武器屋の息子が横から口を挟んだが、「おめーはそういうの気が付かねぇだろう。だから仕事に使えないんだよ!」と言われ、「そんなことねーよ」とぶつぶつ言った。。 「そうだな、街道も街も、俺達がでてくるときには変わったことはなかったよ。そのとき街に入っていた旅人も、あからさまに怪しい奴はいなかった。」 「だいたいここに兵が来たのは昨日の夕方だろ。まっすぐアルカパまで来るとしたら、とっくの昔に襲われているはずだ。兵は一度、ラインハットに帰ったんじゃないのか?」 酒場の主人に続いて、ガスが言った。 「奴らは歩いて村をでていったらしいじゃないか。キメラの翼とか使うなら村の外までいかなくてもいいだろうし、サンチョさんとやらを探しながら、ラインハットまで歩いて帰ったのかもしれねぇな。」 「じゃ、じゃぁ、もう来ないっすかね?」 ディークがガスに絞められている間に、道具屋の主人がガスが抱えていた酒をコップに注いで、言った。 「ここまで派手にやってたら、今日来合わせなくても、すぐに誰かが気が付いて、街で噂になるだろ。奴らが一度ラインハットまで歩いて帰ってたら、その間に隠すなりかくまうなりできるさ。たぶんラインハットの奴らは、何も考えずとりあえずここに来たか、すぐ見つかるとたかをくくってたんじゃないのか?」 そして、ディークをちらりと見て、「だからって、街に来ない保証はないからな。」と意地悪く言った。 「いや、来ねぇんじゃないかな。」 「なんでだよ、親父!」 息子を無視して、武器屋の親父は続けた。 「この村はよそからの客はほとんどない。品物の取り引きも、いったんアルカパに持ってくるから、誰かが買い付けに行くってこともないだろ。だがアルカパはここと違って、外からの旅人が多い。こんなことした日には、あっという間に世界中に噂がひろまるぜ。しかもここならパパスの家があるって口実があるが、アルカパはパパスが買い物に来るって以外、大した口実はないだろ。」 「そうかぁ。」 感心する息子に、こんなこともわからないのか、と言いたかったが、その前にまだディークを絞めていたガスが聞いた。 「それで結局、誘拐事件と捜し物は、どういう関係があるんで?」 さすがの名探偵達も、この答えは出せなかった。 バーテンが新しい酒をあけながら、言った。 「そのことはわかりませんが・・・最近のラインハットは内部のもめ事で屋台骨が揺らいでいますからね。王子誘拐くらい、でっちあげかねませんよ。」 なんのことかわからない、という顔をする村人や守衛達に気づき、バーテンはラインハットの王位継承に関わるもめ事を簡単に説明した。 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||