「それじゃ、パパスはそのお家騒動に巻き込まれたって事かい?」 「パパスさんが旅に出ている間、どこに行っていて誰に会っていたかわからねぇからなんとも言えねぇが、そういう可能性もあるってこった。」 村の男の言葉に、酒場の主人が淡々と応えた。そして、ダンカンのコップに酒を注いで言った。 「問題はあんただよ、ダンカン。どうするね?逃げるか?」 「でもダンカンさんはなにも知らないんだろ?」 武器屋のせがれが自分のコップを差し出して言う。 「下手に逃げたりしたら、なんか隠してるって思われて、アルカパもここみたいに襲われちゃわないか?」 「おまえさ・・・さっきの父ちゃんの話、きいてなかったのか?ほんっとバカだな、おまえは。」 道具屋があきれて言った。 「でも、逃げ隠れしないほうがいいってのはあってるよな。」 ディークをかまうのに飽きたガスが言った。 「それに、パパスさんが街に来るのは、別にダンカンさんだけに会いにくるわけじゃないだろ。買い物もしてたし、守衛所にも顔を出してたろ。容疑がかかってるって言ったら、ダンカンさんだけでなく、アルカパの街ほとんどだろ。それに、今ここにこうして来ている事だって、奴らにしたら気に入らないだろうし」 「すみません。申し訳ない。」 「あ、いや、そ、そんなんじゃないんですよ」 村人に謝られて、ガスは慌てた。 「町長も言ってましたけど、隣同士なんだから、助け合わないとね、ほら、なんて言いましたっけ、あの、相互・・・ふじょし?」 「バカ、ちゃんと教会行けよ!」 酒場の主人のつっこみで、皆が笑った。 「失礼な!ちゃんと行ってますよ!・・・たまに・・・」 ガスは顔を赤くした。 「バカだけど、あんたの言うことはあってると思いますよ、ガス・グリソム」 バーテンはポーカーフェースのまま言った。 「何もしらないし、何も隠していないなら、こそこそせずいつも通りにしていた方がいいでしょうね。隣の火事は助けて当然ですし、お互い、ほとんど顔見知りなですから。」 「だってよ、びくびくするなよ、若いの!」 道具屋の主人がディークに言ったので、男達はまた笑い出した。 村は昨夜の出来事が嘘のように、静まりかえっている。 母親を失った子牛や子ヤギは、他の母親に乳をもらい、満足して眠っている。 なんとか仮修理ができた家や納屋で、生き残った村人達も眠りについたようだ。 男達は答えがでない推理はやめて、明日しなければならない作業を話し合った。 「どうした、静かになったな。もう眠いか?行ったり来たりで疲れたろ。」 酒場の主人がディークに言ったが、彼はビアンカの寝顔に見とれていていて気づかず、ガスに突っつかれてぼそりと言った。 「いやー、かわいいですよね、ビアンカちゃん」 「何言ってんだよ、おまえ!」 「宿の若旦那ねらいか!」 「ダンカン、連れて逃げろ!」 「やめとけ、マグダレーナに殺されるぞ!」 皆が一斉にはやしたて、笑った。 そのなかで、村の男がぽつりと言った。 「だめだよ、その子は。リュカ坊の帰りを待ってるんだから。」 男達の笑い声が止まった。 「帰って・・・くるかな、パパス達。」 「帰ってくるさ!こんなかわいこちゃんが待ってるんだぞ!ほとぼりが冷めるまで、どこかに隠れてるだけさ。悪が栄えた試しはないよ。すぐに戻れるようになるさ。」 武器屋の息子が、自分に言い聞かせるように言った。 しかし・・・ラインハットは強大だ。暴走しはじめたら、誰も止めることはできないということは、皆わかっていた。 |
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